禁域―秘密の愛―【完】
そう平然と笑って言う、啓史さん。
………初めてこの人と出会った時は幼過ぎて気付かなかった。
でも………今ならハッキリと分かる
この人、は……………
「………何が望みだ?啓史兄さん」
「………さぁね?別に欲しいものは無いけど………強いて言うなら、ね。巧………君に対して不満はあるな。自分の胸によく問いかけて考えてみなよ」
「………っ」
そう言ってまだ微笑みを絶やさない啓史さんに一種の恐怖さえ感じた。
「啓史兄さん………アンタは、いつもそうだな。 いつも、自分の地位や名誉、金の為ならどんなことでもやる………。人畜無害な顔をしながら心は欲望の塊だ。
俺は昔から知ってるよ。桐谷家の後継者としてアンタの代わりに選ばれた俺をアンタが心の底から嫌っていることを。
一生専務の地位でアンタが納得するとは到底思えない…………。
俺が高校に通ってた頃、羽振りの良い実業家の娘との婚約話がでたときも、当時恋人だったサラリーマン家庭の女性と平気な顔をして別れてたくらいだからな…………」
そうだ………。巧の言う通りだ………。
啓史は平気で笑いながら、自分の欲望の為なら、人を簡単に貶め、裏切り、傷付けることができる人間なんだ。
「………大正解。さすが、巧。だって、あり得ないでしょ?生まれた時から、桐谷家の後継者だと言われ続けたこの僕が、突然現れた愛人の子にその地位を奪われるなんて。 いくら桐谷家の血を引いてるからと言っても………腹が立って仕方ないよ」