禁域―秘密の愛―【完】

「え…………」

飛鳥さんは私が頭を下げる所を見て驚いたようにその手を緩めた。

しかし、直ぐに思い直したのかまた肩を掴む力が強くなる。

「はっ………! な、によ………!!謝って済むと思ってるの!?どこまであたしを馬鹿にしてるの、アンタ!!綾瀬 瞳、アンタって分かってるんだからっ!
高校時代、巧が私の婚約者になる事を桐谷商事への資金提供を持ち出してでも渋ったワケ………!
何度も何度も、 どうしても好きな女性がいると巧はあたしに言ってきた………。 どうか、資金提供だけしてくれと………他の事は何でもするからと………。好きな女。それがアンタよ………綾瀬 瞳。それから、何とか巧と正式に付き合ってからも、婚約をしても私はッ………」


そこで朝香さんの言葉は止まった。

「っ、朝香さん………」

胸が、張り裂けるように痛む。朝香さんのその後の言葉が想像できたから………。


「巧に一度だって愛されたと思った事は無かった………。私が巧を愛するようにただ巧にも愛して欲しかっただけなのに………」


………やっぱり。



私はーーーー、朝香さんと同じだと思った。


巧の事を愛している。 ………巧の側にいる為ならどんな犠牲を払ってでもいい。

巧と長く付き合ってきた朝香さんの想いは間違い無く本物だ。

だから………分かる。 朝香さんの悲鳴が。 今、私をどんなに責めたいか。
愛する人を奪われそうになっていてどんなに辛いのか。きっと私の事を殺したいとさえ思っているのかもしれない。

私だって、巧の事となれば何でも出来る。………現に私は、恋人であった優斗を振り切って今ここに立っているから。

巧の為なら………裏切りでも、人を傷付ける事ももう何でもやっている。

そう。 同じなの…………

朝香さんと私は同じ想いを秘めているーーーー。
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