禁域―秘密の愛―【完】
「………行くか」
「うん………」
巧と私は、しっかりとお互いの手を握りしめるとそっと部屋を出た。
…………その先に、誰がいるか分かっていた。
「桐谷様………、この方が朝方、桐谷様に会いに………」
外に出ると、 昨日のコンシェルジュのおじいさんが巧に戸惑いの様子を隠すことのないままそう告げた。
「探したぞ………二人共」
「優斗………」
「…………優斗さん」
「…………逃げられると思うなよ。桐谷…………」
そう。そこには…………優斗の姿があった。そして啓史さんもーーーー
やっぱり………優斗はここを突き止めていた。 朝香さんが一人で優斗を引き留めるには限界がある。 それに彼には啓史さんも協力していて、巧が仕事部屋として使うこのマンションが知られるのも時間の問題だった。
「…………瞳。君は本当にいつからそんな悪い女になった? 一体 いつまで、この男の傍にいるつもりだ?」
「ッ、優斗………」
「………さあ、瞳。こっちに来て。 俺と一緒に帰るんだ。今すぐ………」