禁域―秘密の愛―【完】
「これは………優斗さんと俺の問題だ」
「そんなっ………」
「良いから、お前は絶対に来るな!!」
「…………ッ………」
滅多に、大声を出さない巧が私にそう言った。強い意志を持った瞳をしながら。私は途端にその場から動けなくなった。
「どうして………どうして、俺の最も大切な人を奪ったんだ!? 巧君………どうして、君も瞳じゃなきゃならない!? 君には、朝香がいるだろ!? 朝香は君の事を誰よりも愛してる。 それは君が一番よく分かってるはずだ………!」
「優斗さん、俺は………」
「………俺は、瞳以外に本当に愛された事なんて無い。愛したこともない。ーーーー巧君なら分かるだろ? 俺は………今まで俺の金や地位、名誉を欲する奴らとしか出会えなかった。実の両親でさえ昔から仕事で俺の事をまともに見てはいなかった。俺は………瞳と出会って初めて、誰かを愛するという事を知ったんだ。そして………愛されることも」
「優斗…………」
人を本当に愛するという事を知らなかった優斗が唯一愛したのが私だった。
そして、私も優斗を本当に愛していた。
優斗は巧と別れて冷え切っていた私の心をもう一度温めてくれた。巧が言ったように大切な人をトコトン愛するその優しさと、深い思いやりで…………。
「だから………俺は、これからも瞳しか愛せない。そして、瞳ほど俺自身を見て愛してくれる女もいない………! 巧君。俺には、瞳が必要なんだよ………! 君には、朝香がいるだろう!? 瞳でなくても、朝香という他に君を愛してくれる女が………!!」