禁域―秘密の愛―【完】


朝香さんが、懇願するように優斗を見る。そして、優斗が………どこか揺れた瞳で私を見据えた。

「…………う」

「…………えっ?」

「…………何よりも誰よりも瞳を失いたくなかったから………なんて冗談だろう?」

「優斗…………」

「なぁ、巧君! !冗談だろう!?まさか、そこまでして君はずっと瞳の事をーーーー」

「…………冗談じゃありません」

「な…………」

「俺は、瞳を…………どうしても失いたく無かった。だけど、高校生の時………桐谷商事を倒産から救うには桜庭家の援助がどうしても必要だった。俺は………桐谷商事で働いてくれている従業員の人生を守りたかった。だから………、瞳を手放した。一番、愛していたものを………」

「君はっ………」

「これが、真実よ。優斗君………。あたしが………あたしが。 巧と瞳さんを引き裂いたの。どうしても巧が欲しくて………っ」

朝香さんの目に一気に涙が溢れ出した。まるで、今まで抑え込んでいたものを吐き出すように涙がどんどん溢れ出ている。







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