禁域―秘密の愛―【完】
「啓史さん………」
啓史さんはとても苛立った表情で私達を見ていた。
「あのさ、正直言って僕にとってはお前達の恋愛沙汰なんてどうでもいいんだよ。ただーーーー、 昔から僕の一番欲しかった次期桐谷商事のトップの座を奪った巧が絶望を味わえばそれでいい ………。だから、さっさとブラジルに行けよ、巧。 失敗して、仕事も恋人も両方失ってみろ!」
「ッ、何てこというのよ、あなた………!!」
啓史さんの言葉を聞いた朝香さんが、カッとなり衝動的に啓史さんの頬を殴ろうとした………時。
「………やめろ、朝香」
「っ………?」
「手を下げろ。ーーーー………もう、人を自ら傷付けるな。 何があってもだ」
「ゆ、優斗君…………?」
その手を掴み、止めたのは………優斗だった。
「優斗………っ?」
そう言って、ゆっくりと朝香さんの手を下げた優斗と………目が合った。
「…………瞳」
彼は………どこか切なげに、そしてまだ愛しさをひしひしと感じさせる目で私を見ていたーーーー。