禁域―秘密の愛―【完】
彼は、車に乗り込んだ啓史さんを一目見ると私達の方を振り向いた。
「…………優斗さん、今のは」
「…………巧君、勘違いしないで欲しい。 俺は………瞳を諦めたつもりはない」
「優斗………」
「………ただ、 途轍もなく嫌になった。 何も知らなかった俺自身が。 瞳と君との間に起きた過去を知らず君達を一方的に責め立てたこと………。そして、瞳を好きだというこの大切にしなければならない思いを啓史さんに巧君を失脚させるためだけに利用されていたという事実も………。俺は、自分の事ばかりで何も見えていなかった。朝香や啓史さんの言葉で皮肉にも目が覚めたよ」
「優斗………でも、私、私は………」
私は確かに優斗を裏切った。それは変えようのない事実で………今、とても苦しそうに私達にそう告げる優斗を見てられなかった。
私にも罪はあるのに………、一人自分を責める優斗を………。
「………瞳、もう何も言わなくていい。 ただ、一つ聞きたい事がある」
「え………?」
「巧君と別れた後………、俺の恋人になってくれた君からは………確かに、俺に対する深い愛情が感じられたんだ。 誰にも愛されなかった、愛そうとしなかった俺に………初めての本当の愛情を教えてくれたのは瞳だった。それは、事実だよね? 君は………俺を本当に愛してくれていたよね?」