禁域―秘密の愛―【完】
「………何百万だって?瞳にはそれ以上の価値があるんだが、啓史兄さん」
そう言って、巧は不敵に啓史さんに微笑んだ。
「………ったく、本当巧って頭狂ってるよね?ただ平凡でいい子なだけの瞳ちゃんのためにそこまで言えるって」
そして、変わらず憎まれ口を叩く啓史さんだったけれど、その口調は少しだけ棘が無くなっていた。
「啓史さんも、ひょっとしたら少しだけ気付いたのかもしれないわね? 人には絶対に奪ってはいけない大切なものがあること………桐谷君のそれが、瞳だったようにね?」
愛ちゃんが不意に私にそう言ってきた。
「だと………いいな」
憎まれ口ばかりで凄く分かりにくいけれど、もしも 私達の関係から啓史さんが少しでもメリットなど関係無く他人を思う気持ちを得られたらそれはとても嬉しい事だ。
「………ていうか、君達さっさと行くとこ行っちゃいなよ。 時間なくなるよ?」
「ああ、勿論そのつもりだ」
そう言うと、巧は私の手の平を握りしめた。
「………行こう」
「うん………!」
巧と私は目を合わせると、もう一度そこにいた皆んなに頭を下げて、巧の実家へと向かったーーーー。