禁域―秘密の愛―【完】


「あんな引きつった顔して、気付かない方がおかしいでしょ? でも、慣れないよねぇ。 これでもかってくらいプレゼンさせられてるのに。 さすが瞳ちゃん」

「は、はぁ………」


啓史さんは、私に対してこの3年で物を着せぬ発言を繰り返すようになった。 それだけ心を開いてくれるようになった証拠だと信じたい………。

「………まぁ、でも頑張ってるんじゃない?ここ3年、君って仕事が終わった後は毎日、桐谷邸に寄って経営学と語学の勉強して。役員の前で毎月、プレゼンにも取り組んでさ。 料理もその間、やってるんでしょ? 調子はどうなの?」

「あ、この前………実は最終選考に進みました」

「ついに?やったじゃん! 何だっけ、 次は?貧乏飯コンテストだっけ?」

「違いますよ。 何なんですか、その間違い………。家庭料理本 "日常お料理"の和食レシピコンテストです」

そう、私は経営学、語学の勉強と同時に料理のコンテストにも積極的に参加してきた。 何回も試作を重ねて、それを応募して落選………の繰り返しを続けてきたけれど、ついに最終選考まで残る事ができたのだ。



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