禁域―秘密の愛―【完】
「やぁ、 おめでとう。二人共」
「啓史さん………ありがとうございます」
「啓史兄さん。 ありがとう」
次に、 私達の元に来たのは啓史さんだった。
「あ、瞳ちゃん。貧乏飯コンテストで準優勝だったんだって? なんか凄い賞も取ったって聞いたよ。 やるじゃん。 さすが、庶民代表」
「いや、 だから"日常お料理"の和食レシピ部門のコンテストですってば………。 しかも、褒められてるのか貶されてるのか分からないし」
「まぁ、それは大目に見てよ。 猫かぶるのも疲れるんだよね」
そう言って、 啓史さんはわざとらしくため息をついた。
………初めて出会ったあの紳士的だった啓史さんからは想像がつかない程の変貌ぶりだ。
だけど、本当にその分心を開いてもらえてると感じるので嬉しさもある。
「巧もさ、よくこんな公衆の面前でプロポーズしたよね? 優斗君から聞いたけどわざわざここでプロポーズしていいか確認も学校に取ったんでしょ?
学生や先生方も見てるのに」
「何でよりにもよって、この人に事細かな説明をするんだ………」
そう言って、 巧は優斗をジロリと凝視したが当の本人は素知らぬ顔だ。
優斗、悪意があり過ぎるよ………。
「それで、フラれたら面白かったんだけど………相手が瞳ちゃんだったらそれもないなと思って。 つまらないな」
「アンタな、人の一大事を何だと………」
「ま、 それは置いといて」
まだ文句を言いたげな巧の言葉を啓史さんは、無理矢理遮ると
「今度、 貧乏飯、君達の家に食べに行くから。 興味湧いてきたんだよね、食べた事ないから。 だから、さっさと籍入れて、引っ越して、落ち着きなよ?俺、気が変わるの早いからさ」
そう言って、"じゃあ仕事が残ってるから"と私達に告げると去っていった。