禁域―秘密の愛―【完】


「………まぁ、 あれだ。お前達から学ぶ事もあったと改めて思ったところだ」

そう言って、桐谷 光は再び私達を見据えた。 経営者として、いつも凄みを帯びた厳しい眼差しは変わらない。

だけど、 今は確かにそこに何か柔らかなものがあった。



「………幸せになりなさい」



そして、その柔かな雰囲気と共に出たの彼の最大級のお祝いの言葉に………私は、 本当の実感を得る事ができた。


本当に………巧と一緒にいられるんだって。


ずっとずっと、いられるんだってーーーー。


「ありがとう、ございます………」

「あぁ………。 ありがとう、父さん」

長い間、叶わないと思っていた願いを………ずっと私達の恋を認めなかった桐谷 光が最後に叶えてくれた。

こんなに嬉しいことはない。

「…………瞳」

「………ん?」

その感動に浸っていると、不意に巧に名前を呼ばれ私は彼の方を向いた。


「皆んなにも充分祝ってもらったことだし………ここで、渡したいものがあるんだ」

「渡したいもの?」

一体、 何だろうと思い首を傾げていると彼はクスリと微笑み

「…………プロポーズをしたんだから。 俺が渡すものは一つしかないだろう?」


そう言って、私の手をそっと取ると………左手の薬指に銀色に輝く指輪をはめたーーーー。




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