ディスオーダー【短編集】
「どうして殺したの?」

「え?ああ、突発的に?★」

「……」

「だから拗ねるなって!今度人間がいたら、殺させてやるから!なっ?」

「……約束だからな」


 コウタは鉄の棒を放り投げると、もといた場所に戻ろうと歩きだす。

 俺も……いや、俺は、コウタが放り投げた鉄の棒を拾いに行くと、背後からゆっくりとコウタに近付いた。

 ゆっくり。ゆっくり。

 今、ここで、コウタを殺してしまえば、俺は念願の自分の手で殺人が出来るじゃないかっ!!!

 そして、思い切り鉄の棒を振り上げると――。


「ぐふっ?!」


 俺は血を吐き出した。

 鉄の棒を振り上げたまま、カタカタと震える。ゆっくりと視線を下ろすと、身体にナイフが刺さっていた。


「ごめーん。お前の約束、守れなかったわ」


 俺の身体にナイフを刺した張本人――コウタは、そう言って笑った。


「こんなふうに世界が死んでも尚、やっぱり自分は死にたくないもんじゃん?」


 俺の身体からナイフを引き抜くと、コウタは血のついたそのナイフを舐めた。


「まぁ、なんにせよ……これだから人間って信じられないんだよね」


 コウタのその言葉を最後に、俺は静かに目を閉じて生き絶えたんだ。


END.
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