ディスオーダー【短編集】
28 → 信号機
「どうやら世界は滅びるらしい」


 隣の席で運転している恋人のユキくんは、いつになく真剣な表情でそう言った。

 暗い雰囲気を作りたくはないので、おちゃらけた感じで問う。


「え?なんで?」

「今朝、ニュースでそう流れてた」

「ニュース?……あー……アレか」


 そういえば、今朝にそんなニュースを見たような気もする。

 なんでも、過去の偉い人が、近い将来に世界が滅ぶ予知をしていたとかいう……比較的にどうでもいい内容だったのを覚えてる。

 だってさ?考えてもみてよ?

 世界が滅ぶーって分かったところで、私達一般の庶民には何も出来ないじゃん?滅んでいく様を眺めていることしか出来ないじゃん?

 滅ぶとか滅ばないとか、私にはどうだっていい。それまでの人生だったっていうこと。それだけのことよ。


「それで、どうして急にそんな話を?」

「いや……なんとなく。マナちゃんはその時、どうするのかなって」

「私?私は……抵抗する間もなく世界崩壊に巻き込まれちゃってる、かも?」


 また、おちゃらけた感じで言ってみた。

 けれど、ユキくんはどうしてもこの場を暗い雰囲気にしたいのか、真剣な表情のままでこう言った。


「そうなる前に、マナちゃんを守るよ」

「……っ」


 ずるい。そんなカッコイイ顔でそんなカッコイイことを言わないでよ。ときめいちゃうじゃん。
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