ディスオーダー【短編集】
 赤信号なのでとまっていた車たちは、青信号になるのと同時に動き出す。

 青は前へ進め、が、“常識”だから、特に何も考えないまま、ユキくんが運転する車に揺られる。

 すると――。

 ――バッコーンッ!!!


「きゃあっ?!」


 刹那、ユキくんの車が大きな振動と共に揺れる。

 くるくる、くるくる。横に滑るようにして回転した車は、やがて動きをとめた。

 外からはガヤガヤと、たくさんの人の悲鳴や話し声が聞こえる。

 ……何があったの?

 反射的に閉じていた目を開けると、目の前のガラスの向こうは壁だった。

 どこかぼんやりとした頭で辺りを見渡す。隣のユキくんにも目を向ける。

 ユキくんは、どこかで頭を打ったのか血を流し、白目を向いて……死んでいた。


「きゃぁぁぁあああっ!!!」

「おい!この中の人、生きてるぞ!早くだしてやれ!」

「ユキく……ユキくんが……!」


 ユキくんに触れることも出来ないまま、私は見知らぬ一般人に車の中から助け出された。
< 88 / 100 >

この作品をシェア

pagetop