ディスオーダー【短編集】
「にしても、ひでぇ事故だな……」

「赤信号なのに突っ込んで来やがったんだろ?そりゃあ、ぶつかるわな」

「運転していたヤツ、酔っ払っていたんじゃないのか?それとも居眠り運転か?」


 周りの人は口々にそう言っている。

 もうすでに救急車や警察は呼んだのか、だれも携帯電話を使おうとはしない。

 ガタガタ、ガタガタ。道の端っこで震える私の前に、ユキくんの車にぶつかってきた犯人の運転手が姿を現した。


「だから聞いてくれって!俺は酔ってもいないし、眠くもねぇ!交通ルールはちゃんと守ったって!」


 ……何か言っているわ。だけど、ユキくんをあんな目に遭わせたことに変わりは無いんだから、言い訳の前に謝罪をしたらどうなの?謝罪をされたところで許しはしないけど。


「じゃあ、なんでちゃんと守っているのに事故が起きたんだよ?!」

「こっちが聞きたいよ!ほらっ、見ろよ!アレ!俺はちゃんと交通ルールは守ったって!なぁっ?!」


 犯人の運転手に指を差されたところを見ると、青信号機のようだった。


「そりゃあ……時間が経てば色は変わるだろ。バカじゃねぇのか?」

「じゃあ、もう片方も見てみろよ!」


 言われるがままに見てみると、確かに青信号機がそこにあった。
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