ジュンアイは、簡単じゃない。




手始めに。



倉橋くんのいる、3組の教室を……




そうっと、覗きこむ。








ここでも、視線が……痛い。







「おっせーよ、きん!!」




気づいた倉橋くんは、躊躇なく近づいて来て…。



「もー腹ペコ!!」




私の手から、弁当袋を…奪いとった。






「……あれ、もうひとつ…?」


「……うん。……セナくんの分。」




「あー……瀬名ね。」



周りを見渡しながら…倉橋くんは、小さく呟いた。





それから。



「お前らは話題がつきない奴らだなあ…。まさか、もうそんな仲だなんて、アイツも雑食かあ?」



そっと……耳打ちしてくる。




「んな訳ないでしょー?!」



「わかってるって、冗談だよ。……っと…、あぶねえ、俺も気を付けてないと、今度の記事は、お前の浮気疑惑になっちまうな。」


「………。はは…、笑えない。」




私たちを見張るような……厳しい視線。


十分に…、有り得そうだ。




「じゃあ、あっしはここいらで……失礼するぜい?」


「おう、合点承知の助!」




こそこそと、逃げるようにして……。



3組の教室を、後にするけれど。




「……………。」



次第に、その足は……重くなり、




7組…、8組……、さあ、いざ、9組に!!



……と、大股で…


9組への境界線を、跨ごうとして……、




その右足は……


後ろに一歩。



それから、左足も……一歩。






どんどんどんどん後退し……、




気がつけば。





「……おや……?3組……?!」




スタート地点へと…逆戻り!








「NO~~!!!」









「だよなあ……、そうなるだろうと思ってたよ。」



見かねた倉橋くんが、再び…廊下へと顔を覗かせて。





「どーせ、行きづらいんだろ?……俺が持って行ってやる。」




「倉橋くん……。」



もう1つの弁当袋を……受け取った。






「きん。あんまり気落とすなよ?むしろ、ラッキーだと思って!あんなイイ男と噂立てられるなんざ、またとないんだし。自分に…自信を持て!」




「……………。………?お、おうっ。」





今のは……、けなされたのか?励まされたのか……?




倉橋くんは…その足で。




ヒラヒラと手をひらつかせながら……、





9組に向かって、歩いて行く。







何だかんだ……、私は、恵まれてる方だと…思う。




最高の友達はいるし、倉橋くんみたいな…お兄ちゃん的存在もいるし、




奈落の底に…落ちる前に、必ず誰かが手を差し伸べて…




私を、引き上げてくれる。



強みでもあるし、逆に言えば…


おんぶに抱っこ。






呑気な思考でいられるのは……こんな風に、育って来たから。



停電になって……おろおろして。


女なのに…料理もできなくて。



人に迷惑をかけないと誓っても…

結局失敗だらけで。





いつまでも…、この生活が続く訳がないのに。





これから……



どうやって過ごして行けば、いいのだろう。







セナくんからの厳しい指摘は。

全てにおいて……事実なのである。







「………。世が世知辛いんじゃなくて……、私が……甘いんだ。」






今更ながら…、気づく。


彼のように、真っ正直から……叱責する人が。





近くには…いなかっただけなのだ。

























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