眠り姫はひだまりで【番外編】


「…好きな人、ですか?」

「……うん」

「………………」

頼むから、そんな泣きそうな顔しないで。

…こっちまで、泣きたくなるだろ。


それきり黙った彼女に、僕はため息をついた。


「…ずっと、大切だったんだ」


目を見開いた彼女が、僕を見つめる。

僕はちらりとそちらを向いて、ふっと笑った。


「…いつまでも僕の隣で、泣いたり笑ったりしてくれたら、それだけでよかった」


ぽつり、ぽつりと。

誰にも言ったことのない気持ちを、吐露する。

「あの子が困ったときは、僕が助けてあげる。恋愛とか汚い感情とか全部、知らずに笑っててほしかった」

町田さんの瞳に、涙が浮かぶ。

…馬鹿みたいだ。

こんなの…馬鹿、みたいだ。

僕は夕焼けの赤を見つめて、言った。


「…けどやっぱり、どっかですれ違っちゃうんだよなぁ」


それは、環境の変化だったり。

人との出会いだったり、小さな愛のかけらだったり。

原因は、いくらでもあるけど。

人は強くなって、抱える想いも事情も変わっていく。



< 182 / 205 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop