眠り姫はひだまりで【番外編】
隣の席で、提出期限の過ぎた課題を進める柚木が、「ちよちゃん」と言った。
「大和、俺の課題が終わるの待っててくれてんの。先帰った方がいいかも」
…柚木の、くせに。
どうやら僕のことを気遣って、町田さんにそう言ってくれているようだった。
町田さんはしばらく何も言わなかったけど、やがて「…じゃあ」と言った。
「あたしも、待ちます」
「…帰りなよ」
「いえ。待ちます」
そう言うと、町田さんは近くの席に荷物を置いて座った。
「……………」
…別に、君が気にすることじゃないのに。
町田さんは、真剣な目をしていた。
やがて課題が終わった柚木が、職員室へ提出しに行った。
柚木によってかろうじて会話が成り立っていた空間に、沈黙が降りる。
「……先輩」
先に口を開いたのは、彼女のほうだった。
「……なにか、あったんですか」
…この子の辞書には、『さりげなく』という単語は存在しないのだろうか。
もうもはや慣れてきたなぁなんて思いながら、僕は「まぁね」と返事をする。
…だから。
君が、そんな苦しそうな顔、しなくていいんだよ。