《完結》アーサ王子の君影草 上巻 ~忘れられた庭に咲く誓い~
「ああ、これは果実茶の屋台だよ」
「果実茶って甘いの?」
「飲んだ事無いなら買ってみる?」
「ほんと!?」
「並んでみるか」
シュサイラスアでは多く獲れる果実で様々な加工品が作られるが果実茶もその一つ。手軽で味も種類が豊富な為、一般的かつ人気がある。目の前の屋台は有名店が出している所為か大層な人出だ。
きらきらと瞳を輝かせるスズランと賑わう列に並ぶ。
「すごい人気だね! それに果物の甘くていいにおいがする」
「色々あるけどスズランは何にする?」
「選んでいいの?」
「もちろん」
並びながら果実茶を選ぶ。スズランは小首をかしげ品目一覧を眺めると顔を顰め、真剣そのものに悩んでいた。
「……うーんっと…」
「っ…くく、そんなに怖い顔で悩まなくても果実茶位いつでも飲めるよ」
「だって、全部おいしそうなんだもん。迷っちゃう」
「んー、そうだな。どれも美味いけど木苺と桃のが特に人気みたいだ」
「そうなんだ!」
「じゃあそれにしようか」
嬉しそうに笑うスズラン。果実茶一つでこんなに笑顔を見せてくれるのなら毎日でも連れて来たくなってしまう。
「うん! ありがとう。ライアは?」
「俺は蜂蜜と檸檬のやつ…」
「わあ…、そっちもおいしいそうだね」