俺しかいない



「翔くん…だっけ?」


「へっ!?」


見ると、隣にはいつの間にか桜が。


「あ、翔でいいよ」


「ははっ、翔、どしたの?こんな所で」


ニコッと笑う桜。


「あ、あ~…

賑かすぎるのに酔っちゃって」



俺は頭をかきながらうつむいた。
と、同時に桜の両手首に赤く巻きつくような筋がいっていることに気付いた。



「手首…どうした?」


「え…これは、その…、転んだ」




は!?

いやいやいやいや!!

いくらなんでも転んだはないでしょ!!



「そ…、そか」




しまった。

思わず納得しちまった。

どう考えてもコケて手首怪我する奴なんているわけねぇ…



「ねね、一緒に散歩しない?

私も賑かすぎるの

ちょっと苦手なんだ」




さっきの会話がなかったかのようにいきなり言い出す桜。



「あ、うんいいよ~」



とりあえず今は流しとくか。






そうして俺たちは校門前から歩き始めた。




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