俺しかいない
「夏の夜って気持ちいいよね。
こうやって夜でも肌を出せるからかな?」
ブランコに乗りながら桜は両手を前に伸ばした。
俺たちは学校からそう遠くない小さな公園に来ていた。
虫の声が少し耳に障る。
「そうかな?」
俺は曖昧に笑って見せた。
「でも私、冬の夜の方が好きなんだぁ…」
桜はまたブランコの鎖を持ち直してこぎはじめた。
「だって、冬の夜空の方が綺麗に感じない?空気が澄んでるのかな…なんでだろ」
「俺は夏のが好きだよ。寒い夜なんて嫌ぁい!」
俺がそう言いながら頬を膨らますと、桜はクスクスと笑った。
「翔はおもしろいね」
「そか?」
正直言ってちっともおもしろいことした覚えはないんだが…
桜のおもしろいの感覚は何かが違うようだな。