『華國ノ史』
 ケイロンもまた街に残り、発掘隊を組織し自身のコレクションである貴重なアイテムを掘り出すとの事だった。


 ウルブスが借りていた細身の剣はまだ貸しておいてくれるらしい。


 ツバが無いこの貧弱そうに見える剣は「血を舐める指揮棒」という曰く付きの剣であった。

ケイロン
「空を切り裂く音が大きいのと、切れ味鋭く、

 切られた者が次々に悲鳴を上げる為にそう呼ばれておる。


 あとセブンのその剣は…」

 
 セブンは抜き身状態の希望の剣をケイロンに差し出した。


ケイロン
「やはり、間違い無い。
 
 正義王の希望の剣じゃな」


 ケイロンが魔力を込めると剣に刻まれた古代の文字が銀の光を発した。


ケイロン
「握り手から切っ先に魔力を送る事で魔法の詠唱をするのと同じ効果を得られる。

 古代の封印された魔法技術だ」


セブン
「何だか体が軽いや」

ミニッツ&セコンド
「元気が湧いてくるな」

ウルブス
「鼓舞の魔法ですね」

ケイロン
「さよう。戦場での士気は重要であるからな。

 古代の王が有していた神剣よ」


 光が収まってもその効果は暫く続くようだ。

 
 ケイロンは剣をセブンに返し、セブンを真っ直ぐに見た。


ケイロン
「これは確かに周りの者を勇気づける。

 しかし、使い方を誤れば多くの者を死地へと誘う魔剣でもある。


 希望となるか、蛮勇となるかは先導者次第。


 それ故フォロフォロ様が正しき心を持つお前に託したのだろう。

 
 決して期待は裏切るで無いぞ?」

セブン
「…はい。

 それはここで学べたと思います」

ウルブス
「ふむ、ではケイロン様失礼します」

ケイロン
「待て待て、これも持ってゆけ」

 ケイロンはセブンに皮の手袋を、双子には一対の杖を渡した。


 そして腕輪と黒のドレスを袋に入れ渡した。


ケイロン
「取り急ぎ魔法で掘り出した物だ。

 おかげで回りが崩れ他の物を取り出すのに時間がかかってしまうわ。

 残りは誰に渡すか分かるであろう?」

セブン
「はいっ!」

ケイロン
「では王都へ急げ、悲しんでいる暇は無い。

 例えそれが悲劇になろうと歴史書は書かれ続けるのだからな」


 四人はドラゴニュートに頭を下げ、眠りドラゴンを失い、未だくすぶり、煙を上げている街を後にした。

 

 
< 117 / 285 >

この作品をシェア

pagetop