『華國ノ史』

勇猛な獅子、執念の狼

 「魔法都市陥落、国王の決起」の報は大陸北を電撃のように走った。


 華國軍事首脳部は先の奇襲で踊らされた事を悔やみきれずにいた。


 クラッシュを作戦本部に迎え入れ、多くの学者、引退した軍事関係者、民間の知識人も続々と王城へと自主的に参じた。


 これにはウルブスの余命を捨てた戦線の復帰の報が大きく誇張されて広がった効果も大であった。


 保守的な王の憤慨。

 平和を望む老兵の回帰。

 主要都市での虐殺。

 若き王子の出兵。

 新たに作られた精鋭部隊。 
 
 それを率いる最年少の騎士。


 全てが華國国民の心を揺さぶった。

 
 若者達はクワから槍に持ちかえ、

 老人は杖をついてでも関所へ向かった。


 鍛冶屋は鍋修理から防具作りに切り替え、

 商人達は金貨を惜しみ無く差し出す。


 燻っていた傭兵団は息を吹き替えし、各地で自警団が作られた。


 国王に保護されていた亜人達は立ち上がり、

 上位の精霊ですら王に敬意を表し王城に現れた。


 二度の侵略を受けてもなお、平和を望んだ王があらゆる者から愛されていたという結果であった。


 選定眼を持つ王は常に善政に勤める者だけを上に立たせていたからでもあった。


 華國一丸となって戦争への準備が進んでいく。


 かつて北大陸を統一した頃の様な活気に街は溢れていく。


 皆がこの国を守りたいと望んで自発的に動き出す。


 皆のやる事は違ったが、統制GA無いとは言わせない程に連携を組み、

 華國は巨大な生き物のようにその爪を煌皇国に向け始めたのであった。
 
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