『華國ノ史』
 セブンは大抵の事は人の言うことをちゃんと聞くが、

 幼いながらも決して譲らない事がしばしばある。

 
 クラッシュに怒られてもちょくちょく魔法に自我を与えるし、

 ウルブスに諭されてからもしばしば喧嘩騒ぎを起こしていた。

 
 しかし、それは良い方向にも向いていった。


 カトリは痛みと疲れから週に三回しかバルデスの訓練所に行かなかったが、

 セブンは殆ど毎日の様に出向き激戦を繰り返していた。


 訓練所で戦闘服に着替え、素振りをし、

 集中してから最強の種族の尻尾に挑む。


 そして手に豆を作り、擦り傷や打撲を抱えて尻尾の間を出る。


 出るときに連敗記録の線を引くのも日課となっていった。


 朝は一般教養、昼は魔法教養、魔法実践、放課後は寮の食事前まで尻尾と戦い、

 寝る前に魔力を限界まで送る。

 
 通常の訓練生の生活だけでもハードであったが、セブンにはそれほど苦痛では無かった。

 知らない事を知るのは面白い。

 
 普段使っている魔法の由来を知るのは楽しかった。

 
 未知の種族や、壮大な歴史にはいつも驚きがある。

 
 魔法を覚え昇華させ、クラッシュを驚かせるのは愉快に思えた。

 
 体を動かすのも楽しかった。

 
 龍の尾との戦いは決して勝てなかった兄達を思い出す。

 
 魔力送りも寮で一番という事で自分に自信が持てた。

 
 セブンは充実した学園生活で眠気を抑え、最近覚えた拙い文字で家族に手紙送り続けた。

 
 しかしそんなセブンを心配したウルブスがセブンを気遣った。

 
 ウルブスは笑うカピパラ寮の庭でセブンに問いかけた。

ウルブス
「最近寮に帰るのも遅いし、怪我も多いですね?」

セブン
「詳しくは言えないけど、どうしても倒したい相手がいて…

 でも、訓練だし喧嘩じゃないよ」

ウルブス「ふむ」

セブン
「ウルブスって華龍隊の隊長だったんだよね?」

ウルブス「ええ、確かに」

セブン「剣を教えてくれない?」

ウルブス
「剣を?必須授業後にあるでしょう?

 剣を学ぶクラスが…でもまあ教えましょうか、

 実践で使える剣を」

セブン
「やったー!っと、

 じゃないや、ありがとうございます」

ウルブス「成長しましたね」

 
 ウルブスは実はこの時をずっと待っていたので、

 笑顔で即座に準備に取り掛かった。



 
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