『華國ノ史』
 眠りドラゴン城では三年に一度の祭りが開催されていた。


 この魔法都市を築いたドラゴンが眠った日とされているこの日には、
 
 魔法使いも訓練生も一般市民もが混ざってお祝いをする。


 遠方の都市からも多くの参加者が集い、目当ての出し物を見学にやって来るのだ。


 多くの出店や、商店街ではセールが行われ、

 オークションでは目玉商品が多く出品され祭りを盛り上げる。

 
 訓練生達も前もって特性クラス別に出し物を考え街を賑わせた。

 
 カトリの風魔法クラスでは毎年恒例の紙飛行機レースが行われ、散財するものが続出した。


 どうも賢者ケイロンはこれで生活費を稼いでいるようでかなり真剣に勝負に挑んでいるようであった。


 久しぶりに現れた死霊使いクラスでは教師のムクロウとクロネが作りだしたリアルお化け屋敷が子供達にトラウマを植え着けた。


 ミニッツ&セコンドの精霊クラスは子供受けする精霊を呼び出し、

 子供達を乗せて街を練り歩きお化け屋敷で泣いた子供達を笑顔に変えた。

 
 セブンはピエロと組んで魔法を組み合わせた大道芸を行い人々を驚かせていた。


 この日ばかりは南の国境付近に配備されている華龍隊と虎華隊が帰還しさらに祭りを盛り立てる。


 闘技場では前線の英雄達が大きな魔物を打ち倒し観客を沸かせていた。


 この祭りのメインイベントは、 腕に覚えのある訓練生達が三人でチームを組みトーナメント戦を戦い抜く、

 『ドラゴンパピー杯』であった。

 
 訓練生は決闘用グローブを付け戦い、打ち出される魔法弾が弾ける度に歓声があがった。


 アワー、ミニッツ、セコンドの三兄弟は準決勝で魔力を切らし、惜しくも敗退する。


 この頃すでに実力が飛び抜けていたカピパラ寮の五人はここで再注目される事になった。


 特に無尽蔵のように魔力弾を打ち続けて優勝を飾ったセブン、カトリ、クロネは訓練生達から羨望の眼差しで見られる事になる。


 今でもカピパラ寮の一室にはこの時の優勝カップが3つも飾られている。


 三期連続で同じメンバーが優勝したのは過去160年振りだそうだ。

 
 祭りの最後を締め括るのは魔法使い達が実験の過程で生み出した失敗した魔法薬であった。


 上級魔法使いがそれらをいくつも空中へと浮かせ、

 別の魔法使いがマジックアローでそれを打ち壊した。

 
 夜空には爆発音と共に色とりどりの光が飛び交い、

 魔法都市の上空を照らす。

 
 それを見ながら皆は城に三年間の平和を感謝し、

 また次の祭りまで平和である事を祈るのだった。

 

 

 

 

  
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