『華國ノ史』
 無知なる者の止まり木では夏期の15日に大型の休校がある。


 多くの訓練生達は帰省を望むが魔法技術情報漏洩防止策がある為に監視付きでの帰省となる。


 貴族である者達には監視は付かず従者が出迎えに来る。

 
それ以外は王都より騎士達が派遣されるが、

 セブンに関しては特別に内部調査員が付くことになった。

セブン
「ピエロ!」

ピエロ
「ちょっと背が伸びたかな?」

 
 懐かしい友との再開をセブンは喜び、

 身長だけでない成長を遂げているセブンを見るのはピエロの毎年の楽しみだった。

 
 セブンの家族はピエロも温かく迎えるが、

 そこに兄二人の姿は無い。

 
 セブンが家を出たあと直ぐに家を出たという。

 
 またカトリ、クロネ、ミニッツ&セコンドが休みを利用して遊びに来る事があった。

 
 特にカトリは豪華な実家で過ごすよりも、

 緑に蒸せかえるセブンの実家が気に入ったようで頻繁に訪ねてくる。

 
 セブンの家族もカトリを良く思い、家族のように接した。

 
 時には厳しく、粗っぽく扱われるが、その壁の無さもカトリには心地良かった。

 
 短くも楽しい休日を過ごし帰って行くセブンの背中は初めの頃と変わって逞しく見えた。


 それでも名残惜しそうに何度も振り返る所は変わらないようだ。

 
 龍の尾とウルブスに鍛え上げられたセブンの剣は以前と比べ物にならない成長を遂げていた。


 祖父もセブンに剣を教えている者に負けてはいられぬと奮起し、帰って来たセブンを徹底的に鍛え始める。


 商売が上手くいっているので家の手伝いをしなくても良いのは幸いであった。

 
 いつの頃からであろうか、帰省の往復の間の旅で、セブンはピエロの仕事を手伝うようになる。


 危ない仕事こそ任せなかったが訓練には無い緊張がセブンには良い刺激となる。


 休暇を終え、五人が寮へ戻るといつも宙に浮いた鍋が出迎えてくれる。


 どうやら不可視の料理人は暇で仕方なかったようだ。

 
 ウルブスは土産話責めに合い、六人は夜遅くまで話し込んだ。

 
 皆は会えなかった少しの間、どうも寂しかったようであった。

 

 

 
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