好き嫌い。
「どうぞ。」

「お…お邪魔しま〜す。」


綺麗な部屋。

最初の印象。
2DKのマンション。

「殺風景だろ。カメラの機材しかないからさ。」


そうなんだ。

通されたリビングにはポートレートがたくさん。


その中に…写真立てに入った古い写真。
モノクロに見えたけど…違う。シルエットなんだ。


「それ、ミノリ。わかるか?」

よーく見ると、グランドピアノを弾いている、ショートボブの女の子。


「あたし?」

「そう。ごめん、隠し撮りしたんだ。あんまりにも楽しそうに弾いてるから邪魔したくなくて。
そしたらすごくいい写真が撮れてさ。」


キッチンに入っていった康太は、どうやらコーヒーを用意しているようだった。


「俺のお気に入りなんだ。写真も…ミノリも。」


マグカップを両手に持って出てきた康太は笑っていた。
初めて見るかもしれない、素の笑顔。


ドキンと胸が音をたてる。


「座って。」


ソファにちょこんと座るとすぐ隣に康太が腰をおろす。

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