好き嫌い。

その4

「実里!」


式場の入口に立つ、すらりとした女性が手を振る。

「アキちゃん!」



会うのは4年ぶり。
久々に会うアキはさすが花嫁、美しく輝いていた。


「やっとくっついたのねー!何年やきもきさせたと思ってるのよ〜!」


背中をバチン、と叩かれる。

「久しぶり、伊達。」


アキの後ろにいたのは、新郎になる遠藤 隼人だ。

「久しぶりだね、遠藤くん。
あ、アキちゃんも遠藤になるのかぁ。」

「当たり前だろ。お前、昔っからそういう抜けたことよく言う奴だったよな。

…えーと、オレの記憶が確かなら…2コ下の奥井だよな?」


実里の後ろに立っていた康太に声をかけた。
ぺこり、と頭を下げた康太。

「隼人、写真撮影お願いしたカメラマンさんよ。」

アキちゃんが遠藤くんに説明すると、え、と驚いた顔をした。

「だってこいつすごい賞獲ったとかなんとかで雑誌とかテレビとか出てなかったか⁈」


…え⁉︎


「すごい出てたわけじゃないですよ。賞を獲った一時期だけです。

明日はよろしくお願いします。

アキさんとは中学生の時からの腐れ縁なので、色々無理難題押し付けられてます。」



笑ながら言う康太は、嫌味ではなく、楽しそうに話している。

実里の知らない所でアキは康太とやり取りをしていたらしく、複雑な心境になる。


「疑わないでよ、実里。
あたしはあんたに幸せになって欲しくて頑張ってたんだから。」



ぼそりと呟くアキ。
ありがとう。
アキちゃんが背中を押してくれなきゃ、今のあたしはここにいない。
康太を諦めなくてよかった、と思えるあたしはいないんだ。


「感謝してる。
アキちゃんと友達でよかった。

これからもよろしくね!」

笑う実里の目には涙が浮かんでいた。




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