好き嫌い。
「あの、ありがとうございました。」



最初に居た場所に戻ると、彼はカウンター内でコーヒーを入れていた。


「コーヒー大丈夫?」

「あ、はい、大好きです。」


そう言うと満面の笑みでカップを出された。


「ゆっくり。

話したくなったら言って。

無理なら無理でもいいよ。」


優しい雰囲気に包まれて飲むコーヒーは、苦味が少しあってホッとする味だった。


「あたし…結婚を約束した彼氏がいるんです。


小学生のときから好きで…ようやく今年付き合うようになって。

長く好きって感情を抑えてきたんですけど…。


遠距離恋愛なのもあって、なかなか会えなくて。

あたしの父に反対されて同棲できなくて。


あたしはさみしいのを我慢するために仕事に没頭しました。


夏季休暇がとれたので彼に連絡したんですけど、返事がこなくて。


よくあることだったから気にもしてなくて。


今日、親友と飲んでたんですけど。


そこで…彼が若い女の子と仲良さそうに手をつないで歩いてるの見てしまって…。


う…浮気してるなんて思ってもなくてっ…あたしだけだって言ってくれたのに…」


涙が落ちた。


もう、ミノリじゃなきゃ駄目なんだ。



そう、言ったくせに。


「そっか。

辛かったね。俺は男だからどうしても彼の気持ちを考えてしまうね。

生理的なものは女性に比べて抑えが効かないとこもあるんだよ。


彼の言い分を聞いて見た?」


首を横に振る。


「ここに彼を呼ぶかい?
俺は君の味方だよ、心配いらない。

どうする?」

…今は何も考えたくない。


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