好き嫌い。
「ゆっくりできるなら、俺のところに来る?害がないから大丈夫だよ。」


笑う彼の言葉の意味がわからない。


「害がない?」

「そう。あ、名乗ってなかったね。

俺は関家 潤(せきや じゅん)。
ここで喫茶店やってる、36歳。

バツイチのおっさんだけど、よろしくね。」

バツイチ…さっき奥さんの服って…。


「君は?」

「あ、伊達 実里です。実の成る里と書いてミノリです、28です。

OLしてます。今は一週間の夏季休暇で地元に帰ってきたばかりで…」


康太…。


どうしたらいいの?

あたしはあなたにとってもう邪魔な存在なの…?


「実里ちゃん。うちにおいで。
嫁さんが残した服もあるし、俺ね、女性を愛せない身体なんだよ。

だから、安全安心。」


…え?


「色々あってダメになって、嫁さんはそれが嫌で出て行ったんだ〜。


男のくせに女を悦ばすこともできないなんて最低!

…だったかなぁ。そう言われてね。

だから、実里ちゃんと彼のこと他人話とは思えなくてさ。」



寂しそうに笑う関家さん。


身体が全てじゃない筈なのに…その言葉はキツイかも。


「行くところないので…お願いします。」


大胆かもしれない。


でも。


すがりたかった。

苦しくて息が出来ない。


助けて欲しかった。


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