好き嫌い。

その5

喫茶店の2階が部屋になっていて、上がってくつろいでいて、と言われひとりきりになる。



不意にアキのことを思い出し、連絡をしようと携帯を取り出す。



おびただしい数のメールや電話の着信。


アキ、香代、そして…康太から。


読む勇気はない。


だから、アキにメールする。


すぐに折り返しで電話が鳴る。


「実里!あんたどこにいるのよ!」


すごい剣幕で怒るもんだから、怯んでしまう。

「アキちゃん…今ひとり?」

「香代と香代の旦那さんと、隼人と…奥井康太も一緒。
みんなすっごく心配してるんだからね‼︎」

…康太も…。


「ごめんなさい…でも会いたくない…康太にもう忘れてって伝えて。」


…もう、傷つきたくない。
何度も何度も傷付くなんて、嫌。


「自分で言いな。実里、ちゃんと話を聞かなきゃダメ。
あんた昔もそうやって逃げてばっかだったでしょ⁉︎
逃げずに立ち向かいなさい。」


アキちゃんが康太と一緒にいるってことは、アキちゃんが納得いく理由があったから、なんだろう。


…わかる。わかるけど…。


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