好き嫌い。
自信がないから、一歩引いて構える。
それが康太には愛情がないように映るのかもしれない。


踏み込まない。


深入りしない。



それが定着していたから、変えようとか変わろうとか思わなかった。


それが康太を傷付けてた…?


「実里ちゃんはもう少し自信もっていいんだよ。
昔は昔、今は今。大人になった君は綺麗で魅力ある女性だよ。」


そうなんだろうか。

信じても大丈夫なんだろうか。

不安でたまらなくなる。


「それでも彼がした事が許せないなら、別れるべきだね。
その時はいつでもおいで。」


優しく頬を撫でる大きな手。

康太とは違う、柔らかな優しい手。


どうなんだろう。


あの手に触れられて、まだ許せる心があるのだろうか。


でも。


「逃げるの、やめます。」


今までのあたしは、嫌なことからひたすら逃げてきた。


変わらなきゃ。


自分を変えなきゃ。


「康太と向き合います。

ちゃんと…納得いくまで話し合います。」


前向きに考えなきゃ。


「頑張れ、実里ちゃん。」


肩をポン、と叩かれ顔を上げる。

「すみません、関家さんには何の関係もないのにご迷惑おかけして。」


頭を下げた。



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