危険なキス
「麻衣子……」
そこにいたのは、麻衣子だった。
麻衣子はずっと待っていたのか、鞄を持って壁にもたれかかっていた。
だけどあたしたちの姿を見ると、嬉しそうに駆けてくる。
「お前、もしかしてずっと待ってたの?」
「えへへ。うん、一緒に帰ろうと思って」
「だったら、教室で待ってればよかったのに」
「……うん。そうとも思ったんだけどね……」
それだけ言って、麻衣子は言葉を濁した。
「紫乃もお疲れ様」
「ううん。あたしは何も……」
麻衣子はあたしへ振り向くと、いつもと変わらない笑みを向けた。
だけどなんとなく見える。
瞳の奥底に揺らぐ不安……。
麻衣子は一体、何を不安がっているんだろう……。
「じゃあ、3人で帰るか」
「うん!」
「……」
だけど、楠木の提案に元気よく答えるころには、麻衣子はもういつも通りだった。