危険なキス
 
「柊っ」


ホームルームが終わると、すぐに楠木があたしの席へ来た。
顔をあげると、金曜日にあった気まずさはもう消えていた。


「あ、のさっ…」
「何?」
「今度の土曜か日曜っ……どっちか空けれる?」
「え?」


突然の誘いに、答えを出す前に驚きの声をあげてしまった。
楠木も誘いなれてないので、すぐに言葉を続ける。


「あ、や……ほら、俺たちって、付き合ってからまだ、デートらしいデートって一回もしたことないじゃん?
 柊が勉強で大変なのは分かってるけど、たまにはどうかな、……って。
 ……なんて、やっぱそんな余裕ないかっ」

「いいよ」


顔を赤くしながら、一気にバーッと話した楠木に、なんだか少しくすぐったくてすぐに返事をした。

楠木の、こんなふうに一生懸命なところを見せられたら、断れないよ。


「マジ?よっしゃ!」
「どこ行くか決まってるの?」
「いや、これから。それまでに、どこ行くか決めようぜ」
「うん」


楠木はそれほど嬉しかったのか、ルンルンとした表情であたしの席から離れて行った。

そんな楠木を見て、思わず笑みがこぼれた。
 
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