危険なキス
「まったくもー……」
「麻衣子っ?!」
楠木が去っていくのと同時に、少し恨めしそうな顔で現れた麻衣子。
突然のことで、一瞬ビックリした。
「拓也のやつ、あたしのときと全然違いすぎ」
「え?」
「あたしと付き合ってた時は、一方的に全部あたしが仕切ってたんだよ。
じゃないと、自分からぜーったいに誘ってこなかったし」
「そう、なんだ……」
ぷんぷんと怒りながら、あたしに愚痴り始める。
「やっぱり、それだけ紫乃のことが好きなんだね」
そう言うと、麻衣子は呆れたように笑いかけた。
「あ、もう拓也のことは吹っ切れてるから大丈夫だよ!
今度友達に、他校の人、紹介してもらうんだー」
本当に吹っ切れているのか、それともわざと明るくしているのか分からなかったけど、麻衣子は笑顔で報告してくれた。
あれからずっと、麻衣子とは変わらず仲良くしている。
そんな麻衣子の優しさに、あたしはいつも助けられていた。