危険なキス
「っていうかさ、あたしと先生、本当に何でもないし。
やるだけ、自分の人間の価値下げてるだけ」
「……」
「それと、本当に好きなら、周りをつぶすことよりも、自分の良さをアピールしなよ。
そのほうがよっぽど、相手が自分を見てくれる可能性があると思うよ」
その子は、これ以上何も言わなかった。
何も言えない、と言ったほうが正しいのかもしれない。
あたしにしか聞こえないような小さな声で、
「……そんなの分かってるよ」
とつぶやいた。
それを聞いて、思わず微笑む。
そして、同じようにその子にしか聞こえない声で、
「頑張ろうよ」
と声をかけた。
それには何も返ってこなかった。
その子とのやりとりが終わると、あたしは振り返って先生を睨んだ。
そして、ずっと心に溜めていたものを吐き出す。
「先生も。
いい加減気づきなよ!
あたしは彼女とは違うんだよ?
絶対に負けたりなんかしないんだからっ……」