危険なキス
 
「っていうかさ、あたしと先生、本当に何でもないし。
 やるだけ、自分の人間の価値下げてるだけ」

「……」

「それと、本当に好きなら、周りをつぶすことよりも、自分の良さをアピールしなよ。
 そのほうがよっぽど、相手が自分を見てくれる可能性があると思うよ」


その子は、これ以上何も言わなかった。


何も言えない、と言ったほうが正しいのかもしれない。

あたしにしか聞こえないような小さな声で、


「……そんなの分かってるよ」


とつぶやいた。

それを聞いて、思わず微笑む。
そして、同じようにその子にしか聞こえない声で、

「頑張ろうよ」

と声をかけた。

それには何も返ってこなかった。


その子とのやりとりが終わると、あたしは振り返って先生を睨んだ。
そして、ずっと心に溜めていたものを吐き出す。




「先生も。
 いい加減気づきなよ!

 あたしは彼女とは違うんだよ?

 絶対に負けたりなんかしないんだからっ……」

 
< 346 / 382 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop