危険なキス
「……」
先生の目が揺らいだ。
だけど口は開かない。
本当は、もっともっと言いたいことはあった。
だけどみんなのいる手前、これ以上何も言えない。
もし言ってしまったら、せっかく秘密にしてきたことが全部パーになってしまうから。
あたしは自分の席へ戻ると……
「すみません。気分が悪いので、保健室に行ってきます」
自分の荷物を持って、物理室を出た。
物理室を出た瞬間、溢れてきたのは悔し涙。
自分が無力なのがムカつく。
何も出来ないのが嫌。
本当はもっともっと言いたいことはいっぱいあるのに、うまい言葉が見つからない。
「くやしー……」
あたしは、保健室のベッドで泣いた。