危険なキス
「次俺!うたいまーす!」
「いえーい!」
カラオケに入るなら、初っ端から盛り上がる部屋。
主に、二人だけだけど。
麻衣子が歌ったり、楠木が歌ったり、デュエットしたり。
あたしは当然、歌わず聞き役。
「柊もなんか歌えよ」
「や、最近の歌知らないし」
もともと、カラオケなんて好きじゃない。
だけど、二人ともカラオケが好きなのは知っていたから、あえてのチョイスだった。
それに……
そろそろかな。
携帯の時計をちらりと見ると、部屋に入ってからもうすぐ1時間。
2時間でとっているから、時間までにはまだまだある。
だけどあたしは、最初から抜けるつもりだった。
麻衣子には最初から言っておいたから大丈夫なはず。
二人がデュエットで盛り上がる中、あたしはそっと鞄を持って部屋を出た。