危険なキス
 
「はぁ……」


あたしはなんとか起き上がり、ようやくベッドから出た。

電気をつけずにそのまま1階へ降りようと思ったけど、その時、月明かりに照らされて、机にある何かが光った。


「?」


不思議に思い、それに近寄る。

そこにあったのは、見たことのあるもの。


いつも湯浅先生の左腕に光る、シルバーの腕時計だった。


「忘れてやんの……」


一度手に取ると、あたしはそれを机の引き出しにしまった。

また次に会ったときに渡せばいいや、と思いながら。
 
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