君が好きだから嘘をつく
心にあるもの
咲季は男友達と会う約束で帰って行った楓を見送り、残っていた仕事を仕上げる為にパソコンに向かっていたが、楓のことが気になり手が全く動いていなかった。楓は妹のように可愛い。
さっきも昔好きだった男友達に会いに行く楓を冷やかしながら見送ったが、本当は心配でしょうがなかった。

入社してから長い間、楓がどれだけ深い愛情と我慢を重ねてきたのか知っているから、心から彼女の幸せを願っている。
彼女はもてる。でもそれを全く生かしてない。もったいないくらいに。
アプローチした人も、陰で想っている人も私は何人も知っている。

なのに、楓は山中健吾しか見ていない・・・いや、見えていない。

そんな辛くも一途に想い続けてきた彼女の前に、昔好きだった男が現れるなんて。

トラウマになる程傷つく恋の終わりを与えた男が、彼女に再会してから何度か誘ってきているようだけど、その彼はいったいどういうつもりなんだろう?
私もそのことで山中くんに揺さぶりをかけたりもしている。
彼の様子を見ると私的には可能性を感じるのだけど、最近の楓は何だか元気がない。
山中くんを想い悩むというよりも、思い詰めているように見える。

そんな状態で昔好きだった人に誘われて会っても、楓が幸せになれると思わない。
でももし・・・その彼が楓のことを愛情をもって大切にしてくれるなら、それもいいのかな・・・?

そんなことをダラダラ考えながらイスに寄りかかって左右に揺らしていると、急にイスの揺れを止められてしまった。

< 136 / 216 >

この作品をシェア

pagetop