最大の出来事
遊び
「育ちゃん、ちょっとノートを見せてもらってもいい?」
「うん、いいよ」

 璃穏が小声で育実に頼み、育実は快くノートを開いて見せる。
 先日、先生が席替えをすることをクラスメイト達に言った。
 全員がくじを引いて、黒板を見ていると、先生が机に触れながら、名前を呼んでいく。
 結果、育実の隣の席は璃穏になり、一桜と友希は一番後ろの席となった。後ろから一桜が璃穏を睨みつけているので、友希が宥めていた。

「いいわね、白沢。育実の隣で」

 鋭い目つきになっている一桜を見た育実と璃穏は困った顔になった。
 席替えをしてから、育実と璃穏が机を寄せて、二人でノートを見ることが何度もある。
 理由は璃穏が一番端で、先生が端から黒板にいろいろと書くので、角度によってとても見ることが難しいから。

「本当に仲が良いわね・・・・・・」
「そ、そうだな・・・・・・」
「あんなにくっついて・・・・・・」

 何度も溜息を吐きながら、一桜は璃穏を睨みつけている。
 一桜を宥めようとすると、友希に大声で怒鳴って、彼は謝ることしかできなかった。
 授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り、号令をしてから席に着くと、璃穏が後ろの黒板を見ている。

「次は体育か・・・・・・」

 璃穏は傷が残っているので、制服の下にすでに半袖の体操服を着ている。
 それでも友希も璃穏の傷のことを知っている。友希には中学のときに喧嘩をしたことだけ話したようだ。
< 63 / 141 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop