最大の出来事
「同じクラスなのに、別々でやるのはちょっと嫌だね・・・・・・」
「育ちゃんを遠くから見ているよ」

 育実はそれに対して、やめるように何度も言った。

「やめてよ!ドジを踏まないか、楽しみにしているでしょ!?」
「そんなことないよ」

 そんなことを言いながら、璃穏はしっかりと笑っていた。
 体育が苦手な育実はいつものように深い溜息を吐きながら、更衣室へ向かった。
 璃穏の予想通り、育実は体育の授業でドジを踏んだ。ボールを投げたら、なぜか後ろに向かい、何もないところで二回も転んだ。
 三回目も転びそうになったが、周りにいた女子達が育実を助けてくれた。
 制服に着替えて教室に戻ると、璃穏が育実に手を振った。

「体育はどうだった?」
「そんなに悪くなかったよ」

 育実は璃穏の顔を見ないようにしながら言った。

「そう?それは転びそうになったところを他の人達が助けてくれたからかな?」
「なっ!」

 育実は手の力が抜けて、体操服を落とした。

「見ていたんだ・・・・・・」
「ちゃんと見ていたよ」

 璃穏は育実の体操服を拾って、育実に渡した。育実はそれを受け取り、ロッカーの中へ放り込んだ。
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