最大の出来事
 空夜は育実が一緒に寝ようとしていることを璃穏の口から言うと、空夜は呆れ顔で育実を見た。

「もう小さな子どもじゃないんだから、一人で寝ろ」
「空夜もひどい・・・・・・」

 育実は俯きながら、自分の部屋に戻った。
 部屋の中に入ってドアを閉めようとしたとき、璃穏が外から引っ張った。

「育ちゃん、一緒に寝ることはできないけれど、育ちゃんが眠るまでだったら、一緒にいることができるよ」
「本当!?」

 さっきまでの暗い表情が嘘みたいに明るい表情になった。
 布団の中に入ったものの、育実はずっと璃穏の顔を見ている。

「育ちゃん・・・・・・」
「はい?」

 璃穏は右手で育実の両目を覆い、視界を真っ暗にする。

「ちゃんとここにいるから、目を瞑りなさい」
「はい・・・・・・」

 育実が素直に従うと、全身の力が抜けて、眠りに落ちた。
 寝息を立てている育実を覗き込み、そっと頬を撫でると、育実の口元が緩んだので、璃穏は小さく笑って、布団をかけ直してから部屋を出た。
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