君がいないと落ち着かない

高校生ほどの落ち着きや賢さはないわりに、無邪気さと幼さの裏に見える大人っぽさを感じさせる雰囲気が忍にそう思わせた。
一定の距離が空いたまま何も言わずにただ立ち尽くす2人。
後ろでもう大半の片付けが終わっていた。
もう1人のギターが彼に近付いて腕を引っ張りながら話し掛けた。そこで初めて視線が途切れた。
ボーカルの男は後ろで見つめる他の2人の方へ引っ張られながらも、また忍を見てきた。
さすがに忍も、もう帰らなければ家にいる母親に怒鳴り付けられると思い、帽子のつばをまだこちらに向けている男に向けて軽い会釈をした。
仲間と合流した後も忍を見つめ続ける男のつばが下がり光が消えると彼も会釈を返しているのだと分かった。
光がまた帽子の下から向けられた後で忍は歩きだし改札口を通った。







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