ミカンとおれんじ ~High School~
「精神安定剤?」


秋梨くんが首を傾げる。


綾場さんは片口を上げてフッと笑った。


「ピアノ弾いてない時ってさ、どうしても思い出しちゃうんだよね。ピアノ我慢して、勉強しまくってた時の事」


拳を握ったまま、その手をそっと頭の方に当てる。




「......あの日の、空気とか、においとか、感触も」




そう言うと、辛そうにギュッと眼を閉じた。


また、あの日の事を思い出していたのかもしれない。


「......だから、ピアノを楽しむためじゃなくそんな事の為に使ってたアタシに、純粋に楽しむ権利があるのかなって、思ってさ」


少し、沈黙が流れる。
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