闇ノ花
土方さんは一つ咳払いをして、筆を硯の上に乱雑に置くと、私の方を向いた。
「どうだ、具合は。あの事件の最中で倒れたと聞いたが」
「大丈夫です」
そう言って、微笑んで見せる。
山崎に、もう嫌っていうくらい休まされたから。
……だけど土方さんは、表情一つ変えずに話を続けた。
「池田屋で人を殺したか?」
「……いいえ」
あの事件では殺していない。
吉田さんを殺しそうになっただけだ。
殺さないと、自分が殺られる。
自分の身は自分で守らないといけない。