【短編】……っぽい。
 
おいおい、田原さんやい、なんであなたはそんなに楽しげな顔で笑っているの。

ナポリタンのケチャップで見事に唇が一回り大きくなっていますよ、まずは拭き取ろうよ。


「まあ、次に残業をすることがあったら、きっと課長も残るはずだから、そのときはそのときで、よきに計らってみたら?」

「よきに、って……」


けれど田原さんは、含みのある言い方をして話を終わらせると、豪快にナポリタンをすすりはじめたため、仕方なくあたしもそれに倣う。

課長が仕事の鬼ならば、彼女は食欲の鬼だ。

こうなった彼女は、誰にも止められない。


しかしながら、田原さんに言われたことを忘れられるわけもなく、それから課長のことを変に意識してしまう自分がいるのは、否めない。

もしかして、課長に好かれている……っぽい?

渋格好いい課長に?

うーん……。


「ぎゃあぁ!しまったぁぁ!」


そんなことを延々と考えていると、出来上がったばかりの会議の資料をなぜかシュレッダーにかけてしまい、しかもバックアップもとっておらず、残業が決定的になってしまった。

あわあわとしていれば、すっと田原さんと目が合い、ふふふっと含み笑いをされる。

もう!何をしてくれるんだ、田原さんっ!!
 
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