【短編】……っぽい。
「じゃあ、予約、ということで」
「……はうっ!!」
すると、あたしの前髪をそっと押し上げ、課長はおでこにチューをする。
突然の告白とクリスマスの誘いを頭の中で整理していた矢先のことだったため、受け身がまだできておらず、なんとも奇妙な声が出る。
けれど、そんな可愛さのかけらもないあたしなんぞにも課長は優しく微笑み、あたしの背中にふわりと手を当てると「まずは残業を片付けましょうね」と、フロア内へいざなう。
「あの……終わるまで課長も一緒にいてくれるんですよね? 1人だと、心細すぎて」
「もちろんですよ。さあ、コーヒーでも淹れましょう。今度は僕に淹れさせてくださいね」
「はい。じゃあ、砂糖無しのミルクたっぷりでお願いしてもいいですか? 熱々の」
快く頷いた課長は、あたしの隣の席にコートと鞄を置き、給湯室へ向かっていった。
ここで甘い気分になれないのが、社会人の辛いところではあるけれど、課長といると残業もなんだか楽しくなるのだから、不思議だ。
課長がコーヒーを淹れてくれている間、資料作りを再開しながら、あたしは思った。
口ベタすぎるぞ、課長、と。