【短編】……っぽい。
いつも厳しい課長なのだ、そんなことを聞いてしまった日には、明日の命はない気がする。
課長は、仕事がよくできる。
部下の面倒見もいい。
ただ、鬼なのだ。
怖い怖い……。
「大崎さん、コーヒー淹れようか」
「……えっ、課長がですか!?」
すると、何を思ったのか、課長はいきなりコーヒーを淹れてくださると言い出し、あたしは思わず、すっとんきょうな声を上げてしまった。
いやいや、やばいやばい。
課長にコーヒーを淹れてもらえるほど、あたしはまだ、肝が据わっていない。
「あたしが!あたしが淹れますんで!」
「そう、ですか。じゃあ、熱々のブラックを」
「了解です!」
席を立ち、急いで給湯室へ向かい、コポコポとコーヒーを沸かしながら、胸をなで下ろす。
たとえあたししか知り得ないとしても、課長にコーヒーを淹れてもらったら、その事実は、あたしが自分でコーヒーを淹れるたびに、延々と付きまとってしまうのだ。
そんな恐ろしいのは嫌である。
ひとつ明言しておくと、あたしは課長が嫌いなのではなく、どうつき合えばいいのかがよく分からないため、苦手である、ということだ。
そこは誤解のないように明言したい。