【短編】……っぽい。
「お待たせしましたー」
「どうも」
自分の席で待っていた課長にコーヒーを渡す。
年の頃、30歳を過ぎたばかりだというのに、渋格好いい課長は、それだけで華があり、一塊の平社員のあたしなんぞがお茶汲みをさせてしまうなんて、もってのほかなことなのだ。
課長がコーヒーを飲みたいというのなら、あたしが率先して淹れなければなるまい。
「ところで、大崎さんは彼氏はいますか?」
「課長、それ、今のタイミングで聞きますか。いえ、いませんよ。できる予定もないです」
コーヒーを飲みながら、少し休憩をとる。
すると課長が唐突に恋愛の話をし出したため、内心は、空気を読め、と思ったのだけれど、あとが怖いので、正直にお答えして差し上げた。
「そうですか。大崎さんみたいな女の子に彼氏もいないなんて。さぞ冬は寒いでしょうね」
「え……。……まあ、ババシャツ着るので」
ん? 課長は、さぞかし人肌が恋しいだろう、と言いたいのだろうか。
まったく、余計なお世話である。
しかしまた、なぜ課長は世間話にあたしの恋愛の話を選んだのだ、しかもコーヒーを淹れようなどど妙に優しいし、謎だ。うーん。